tsurusoの小説

鶴海蒼悠のSF小説

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

星霜に棲むという覚悟〜Time Without End〜

第29話 夕暮れの演奏会 1974年6月25日 火曜 世間では相変わらず様々な節電の取り組みが続いている。僕が困ることはほとんど無いけれど、強いてあげればテレビ放送の休止だった。放送の打ち切りは、深夜の時間帯だけではなくて、日中にまで及んでいた。こうな…

星霜に棲むという覚悟〜Time Without End〜

第28話 マトリ 1974年6月15日 土曜 夜の闇が迫ると、周りの音は静まり返り、まるで時間が止まったかのようだった。此処は船舶を係留して、人や貨物の積み卸しをする埠頭。手元すら見づらい暗闇の中で、海面を覗き込むのはとても危険だ。得体の知れない何かに…

星霜に棲むという覚悟〜Time Without End〜

第27話 小説家 1974年5月19日 日曜 4月22日に誕生日を迎え、25歳の中学2年生になった僕は、唐戸桟橋のある街までバスに揺られていた。唐戸には市庁舎があるから、人の往来が多くバス路線の分岐点になっている。桟橋からは、対岸の門司港まで連絡船が頻繁に行…

星霜に棲むという覚悟〜Time Without End〜

第26話 アンダーワールド 1974年4月22日 月曜 一日の出来事を思い返すと、なかなか寝付けなかった。それに、津々木捜査官はどうなったのだろうと、あれこれ考えるから、何度も目が覚める。こうして寝不足のまま朝を迎えた。 捜査官の無事な姿を一刻も早く確…

星霜に棲むという覚悟〜Time Without End〜

第25話 春のサイクリング 1974年4月21日 日曜 自転車にまたがってペダルを踏むと、春の陽気と心地よい風が体を包み込む。今日は絶好のサイクリング日和のようだ。 約束した集合時間は9時30分だったけれど、集合場所の綾羅木駅には、30分も早く到着した。僕は…